洗面台の脇に置かれた、外したシールドとフルフェイスヘルメット、マイクロファイバークロス
目次(タップで開閉)
  1. 1. ヘルメットを傷めるのは、洗剤ではなく砂です
  2. 2. シールドの洗い方
  3. 3. 帽体の拭き方
  4. 4. 内装の洗い方
  5. 5. 乾かし方——乾燥機は使いません
  6. 6. しまう前に、乾かす。臭いの原因は、汗より湿気
  7. 7. メーカーが言っていること
  8. 8. 製品のラベルに書いてあること
  9. 9. 素材から考えると、どうなるか
  10. 10. 分かっていないこと
  11. 11. 私はこうしています
  12. 12. ここまでの手間を、減らす
  13. 13. 「洗わないなんて不潔では?」
  14. 14. まとめ

ヘルメットの手入れを調べると、たいてい「これは使うな」という話から始まります。読んでいるうちに、何を使っても壊れそうな気がしてくる。この記事は、その注意書きがどこまで確かめられていて、どこからが推測なのかを分けたうえで、実際の手順をまとめたものです。

1ヘルメットを傷めるのは、洗剤ではなく砂です

アルコールはだめ、溶剤はだめ、ガラスクリーナーもだめ。注意書きはたくさんあります。ただ、実際にシールドを白く曇らせ、細かい傷だらけにしている原因は、たいてい洗剤ではありません。砂です。

シールドの素材はポリカーボネート。ガラスより化学的に軟らかく、その上に載っているハードコートは、さらに軟らかい層です。そして虫の跡や路面の埃には、シリカ——つまり砂——が含まれています。

乾いたまま拭くと、その砂をコーティングの上で引きずることになります。布がどれだけ柔らかくても関係ありません。柔らかいのは布であって、挟まっている粒ではないからです。

この記事の手順は、ほぼこの一点のために組み立てられています。布が触れる前に、水で流して砂を落とす。どの洗剤を使うかという議論(第7章から扱います)よりも、この順番のほうがずっと効きます。

2シールドの洗い方

シールドは工具なしで外せます。外してしまえば、流水で洗えます。これが、他のどの方法よりも先に来る理由です。スプレーして拭くやり方では、砂は表面に載ったままだからです。

基本の手順

  1. シールドを外す
  2. ぬるま湯〜冷水で、15〜30秒ほど流す。熱いお湯は使いません
  3. 中性のカーシャンプー(ワックス無配合)を薄めて、素手で洗う
  4. よくすすぐ
  5. 清潔なマイクロファイバーで拭き上げる
流水の下で、外したフルフェイスヘルメットのシールドを素手で洗っているところ
布が触れる前に、まず流す。順番が結果を決めます。

カーシャンプーを選ぶ理由は、やさしいからではありません。泡が滑りを作るからです。粒が挟まったときに、こすらず滑って逃げてくれる。食器用洗剤にこの性質はありません。

保湿成分入りのハンドソープは避けてください。グリセリンやオイルが膜になって残り、夜、対向車のライトで気づくことになります。

素手がいちばん確実です。指先は、粒が残っているのを触れた瞬間に気づきます。布だと、その粒は布の中に隠れたまま、表面を移動していきます。とはいえ、虫の跡を直接触るのは抵抗がある、という人はいると思います。その場合は柔らかいマイクロファイバーで。流水で流したあとなら、次善の策として十分です。

こびりついた虫

こするのではなく、ふやかします。濡らしたタオルを数分かぶせておけば、たいていは流水で落ちます。残ったら、素手でやさしく。食器用洗剤はここでは有効です——油汚れを落とす仕事なので。

研磨スポンジは使いません。ペーパータオルもです。

洗うほどでもないとき

濡らした布で拭くか、何もしないか。乾拭きだけは避けてください。

ミラーシールド・コーティング済みのシールドは別です

ミラー、撥水コート、曇り止めの面——これらは表面の膜そのものが商品です。専用品ですら「使うな」と書いてあるのは、ここです。タナックスのシールドクリーナーPG-211は「ミラーシールド及びコーティング済みのシールドには使用しないでください」と明記しています。デイトナのシールド撥水コートと曇り止めも、同じ面には併用できません。

該当するなら、水と薄めた中性洗剤だけにしてください。

3帽体の拭き方

帽体——ヘルメットの外殻は、シールドほど神経質になる必要はありません。塗装の上にクリアが乗った、クルマのボディとほぼ同じ構成です。

ただし、丸ごと水に浸けることはしません。内側の発泡スチロール(EPS)と、内装の接着部に水が回るからです。

手順は単純です。薄めた中性洗剤を含ませた柔らかい布で拭き、洗剤が残らないよう水拭きし、乾いた面で仕上げる。虫が乾いて固まっているときは、シールドと同じで、濡らした布をかぶせてふやかしてからにしてください。

ベンチレーションの穴

綿棒か、柔らかい小さなブラシで。SHOEIも歯ブラシや綿棒を挙げています。ここは砂と虫が溜まる場所ですが、光学面ではないので、多少の傷は問題になりません。

マット塗装の場合

コンパウンドとワックスは使えません。表面の細かい凹凸で光を散らしているので、埋めたり磨いたりすると、そこだけ艶が出ます。マットは、拭くだけ。

4内装の洗い方

内装は外せるものがほとんどです。外して洗い、乾かして戻す。ここだけは、手順よりも洗剤の液性乾かし方のほうが重要です。

洗剤は中性を選ぶ

アライは内装に「中性タイプの洗濯用洗剤」を指定しています。ここで一度、手持ちの洗剤のボトルの裏を見てください。「液性:弱アルカリ性」と書いてあるものは、意外に多いです。おしゃれ着用の洗剤はまず中性ですが、一般衣料用は製品によって分かれます。

柔軟剤は使いません。繊維をコーティングして吸汗性を落とすうえ、閉じた空間の中で香りが強く出ます。漂白剤・蛍光増白剤の入っていないものが無難です。

洗い方

手洗いなら、ぬるま湯に薄めた洗剤で押し洗い。SHOEIは洗濯ネットに入れての洗濯機使用も認めていますが、頻繁に洗うなら手洗いのほうがよいとしています。

洗濯機に入れるなら、ネットに入れて、おしゃれ着コースなどの弱い水流で。他の衣類と一緒に回すのは避けたほうが無難です。ファスナーやボタンが当たりますし、繊維くずを拾います。

すすぎは多めに。洗剤が残ると、汗と混ざって匂いの原因になります。

EPS(内側の発泡スチロール)

内装を外すと、白い発泡スチロールが出てきます。ここは、基本的に触らなくて構いません。汚れているなら、薄めた中性洗剤を含ませて固く絞った布で軽く拭く程度に。浸けない、こすらない、熱を当てない。

そして——内装がきれいなら、そもそもEPSまで汚れは届きません。第12章の話は、ここに効いてきます。

5乾かし方——乾燥機は使いません

ここは、この記事でいちばん迷いの少ない部分です。内装は陰干し。乾燥機は使いません。

なぜ熱を避けるのか

内装はスポンジと布、そして帽体に留めるための樹脂の台座でできています。熱が変えるのは、このスポンジの厚みと、台座の形です。

そして内装の厚みは、ヘルメットにとって快適性の話ではありません。フィットは安全装備です。ゆるくなったヘルメットは、当たったときに動きます。洗って縮ませることは、少しずつその方向に進むということです。

直射日光も同じ理由で避けます。紫外線は繊維と樹脂を傷めます。ドライヤーの温風も、ストーブの前も、同じです。

完全に乾いてから戻す

SHOEIは、陰干しで完全に乾かしてから使うよう求めています。理由は劣化ではなく匂いです。湿ったまま戻すと、そこから始まります。

厚みのあるチークパッドは、表面が乾いていても中が湿っていることがあります。急ぐなら、扇風機の送風を当ててください。温風ではなく。

シールドと帽体

洗ったあとは拭き上げます。自然乾燥だと水滴の跡が残るだけで、傷むわけではありませんが、光学面に水垢が残るのは避けたいところです。

雨の中を走ったあとも同じで、拭いておくと後が楽です。乾いてから拭くと、その汚れは砂を含んでいます(第1章)。

6しまう前に、乾かす。臭いの原因は、汗より湿気

ヘルメットが臭くなる原因を、汗そのものだと考えている人は多いと思います。実際にはもう一段あって、湿気が抜けないことのほうが効きます。

汗の量が同じでも、乾く時間があるかどうかで結果は変わります。SHOEIが「完全に乾いてから使う」ことを求めているのは、まさにここです。

やることは、ひとつだけ

帰ったら、シールドを開けたまま置いておく。それだけです。

閉じたシールドと、内側の布と、通気の悪い場所。この3つが揃うと、乾きません。ヘルメットバッグに入れてすぐしまうのは、いちばん乾かない状態です。

毎日乗るなら、なおさら効きます。1日1時間乗る人のヘルメットは、次に被るまでの時間で乾ききらないと、湿ったまま次の汗を受け取ることになります。

置き場所

風の通る場所なら、それで足ります。玄関は、実は条件がいい場所です。調湿建材(エコカラットなど)が入っている家なら、そこに置いておくだけで湿気は抜けていきます。

収納する棚や箱の中には、除湿剤や炭を入れておくと安定します。炭は飽和するので、定期的な交換が要ります。

乾燥機という選択肢

ヘルメット用の乾燥機・消臭機も売られています。買うと何が手に入るかというと、時間です。一晩置けば同じ状態になりますが、6時間後にまた乗るなら、一晩は待てません。

逆に言えば、次に乗るまで一晩以上あるなら、シールドを開けて置いておくだけで足ります。

乾かしているあいだに、次に走る先を決めておくのもいいと思います。駐車場とアクセス路の路面がわかるツーリング先を、現在地や都道府県から検索できます

7メーカーが言っていること

ここから第10章までは、「何で洗っていいのか」という話です。結論を先に言うと、はっきり分かっていることと、推測でしかないことが混ざっています。混ぜないように、4つに分けて書きます。まずは、メーカーが実際に書いていることから。

SHOEI

石油系の有機溶剤は使わないこと。酸性・アルカリ性の家庭用洗剤、そしてガラスクリーナーも避けること。薄めた中性洗剤を使うこと。樹脂パーツのひび割れは、洗浄剤や有機溶剤が原因であることが多い、とも書いています。

発泡スチロール(EPS)については、溶剤と熱に特に弱いとしています。内装は陰干しで完全に乾かしてから使うこと。手入れは月1回を習慣にすること。

アライ

アルコールを含む洗浄剤、シンナー系の溶剤、ガソリン、そしてクルマの窓用の撥水剤——これらはシールドの素材を侵し、ひび割れの原因になるとしています。内装には「中性タイプの洗濯用洗剤」、樹脂パーツには台所用の中性洗剤。アルカリ性・弱アルカリ性の油汚れ用洗剤は使わないこと。

Pinlock

インナーレンズは吸湿する多孔質の面なので、水と薄めた石けん水のみ。家庭用洗剤・溶剤・研磨剤は、レンズを傷めるか、微細構造を目詰まりさせるとしています。

ここまでは、事実です

以上は、メーカーが自社の製品について公開している指示です。誰が言ったかがはっきりしていて、確かめられます。この記事で「分かっていること」と言えるのは、ここまでです。

ただし、指示が何を根拠にしているかは、どこにも書かれていません。次章から、その先を見ます。

8製品のラベルに書いてあること

「アルコールはだめ」。これはヘルメットの手入れでいちばん見かける注意です。では、ヘルメット専用として売られているクリーナーには、何が入っているのか。

専用品:アルコール20%

タナックスのシールドクリーナー(PX-002)は、成分と含有量を公開しています。アルコール類20%、界面活性剤、その他。

市販のウォッシャー液:メタノール9〜11%

ホームセンターで売られているウインドウォッシャー液(カインズ、2L)の表示は、メタノール9〜11wt%、陰イオン系界面活性剤、防錆剤。液性はアルカリ性。

並べると、こうなります。シールド専用として売られている製品のほうが、アルコール濃度は約2倍です。

そして「専用品」は、ひとつの処方ではありません

Muc-Offのバイザークリーナーは、脱イオン水とpH中性の石けんで、溶剤は入っていません。同じ「ヘルメット用クリーナー」という棚に、アルコール20%の製品と、実質的に石けん水である製品が並んでいます。

つまり「ヘルメットに安全な処方」という共通の中身は、存在しません。あるのは、そう書かれたラベルです。

専用品にも、使ってはいけない場所があります

タナックスのPG-211は「シールドの素材を侵さない」と書かれた製品ですが、同時にミラーシールドとコーティング済みのシールドを除外しています。デイトナのシールド撥水コートと曇り止めは、同じ面には併用できず、曇り止めのほうはミラーシールドに使えません。

「ヘルメット用」は、無条件の安全を意味していません。どの製品も、想定している面がひとつあって、それ以外は除外しています。

9素材から考えると、どうなるか

ここからは推論です。前の2章は「書いてあること」でした。この章は、素材から考えるとどうなるか、という話で、根拠の強さが一段落ちます。そのつもりで読んでください。

ヘルメットは、何でできているか

帽体は、FRPまたは熱可塑性樹脂に塗装とクリアが乗ったもの。シールドはハードコート付きのポリカーボネート。ベンチレーションやパーツはABSや樹脂。

これは、クルマの外装とほぼ同じ組み合わせです。特に、ハードコート付きポリカーボネートはヘッドライトのレンズと同じ構成です。

そして、カーシャンプー、クイックディテイラー、自動車用ガラスクリーナーは、まさにこの組み合わせのために作られています。クリア塗装、ポリカーボネートのレンズ、ABSの樹脂、ゴム、ガラス——全部同じクルマの上にあるので、どれかを侵す処方では商品になりません。

名指しされているのは、アルコールではなくアンモニアです

ポリカーボネートについて、複数の独立した情報源が一致して挙げているのはアンモニアです。ポリカーボネートを経時的に劣化させ、白濁を起こし、曇り止め・傷防止のコーティングを剥がす、と。

家庭用のガラスクリーナーにはアンモニア配合のものがあります。一方、自動車用のガラスクリーナーは、ふつうアンモニアを避けています——スモークフィルムや周囲の樹脂パーツを侵すからです。

指示が厳しい理由は、素材だけではないかもしれません

メーカーの指示は、世界中の、あらゆる使い方をする、あらゆる人に向けて書かれます。希釈率も、接触時間も、拭き方も指定できません。「薄めた中性洗剤」なら、どう解釈されても事故になりません。「マイルドなクイックディテイラーなら可」は、そうはいきません。

これは、メーカーが嘘をついているという話ではありません。最適化している目的が違う、という話です。全ユーザー・全手法にわたって責任を負わないという目的からは、素材が要求するより厳しい指示が出てきます。それは正当な判断です。

ただし、ここまでは全部、推論です。次章で、その限界を書きます。

10分かっていないこと

前章の推論は、もっともらしく聞こえます。だからこそ、何が確かめられていないかを、はっきりさせておきます。

試験データが、ありません

ハードコート付きのシールドを、10秒だけ拭いた場合に何が起きるか——これを実際に測ったデータは、公開されていません。タナックスもカインズも、ポリカーボネートに対する試験結果を出していません。第8章の20%と9〜11%という数字は、成分表示であって、安全性の証明ではありません。

あるのは、条件の違う実験です

ポリカーボネートは、応力がかかった状態で特定の液体に触れると割れます(環境応力割れ)。ある研究では、割れが始まる限界ひずみはイソプロピルアルコールで1.21%、メタノールで1.74%と報告されています。

ただし、これはひずみをかけたまま液体に浸けた試験です。数秒で乾く拭き取りとは、接触時間が桁で違います。この数字から拭き取りの安全性を導くことはできません——危険だという方向にも、安全だという方向にも。

ついでに言うと、この数字はイソプロピルアルコールのほうがメタノールより厳しいという結果です。「どのアルコールか」で強さが決まるという単純な話でもありません。

「何年も使って平気だった」も、証拠としては弱いです

環境応力割れは、割れる直前まで見た目に変化が出ません。そして、始まるのは縁や穴のまわりです——成形時の応力が残っていて、ハードコートが薄いか無い場所。真ん中を見て「大丈夫」と判断するのは、いちばん壊れにくい場所を見ていることになります。

結局、何が言えるのか

  • 確かめられること:メーカーが何と書いているか。製品に何が入っているか。傷の主因が砂であること
  • 推論できること:素材の組み合わせがクルマの外装と近いこと。指示の厳しさに責任範囲の要素があること
  • 確かめられないこと:実際の拭き取り条件で、何がどれだけ起きるか

この記事は、ここから先を決められません。決めるのは読む人です。次章では私がどうしているかを書きますが、それは判断の一例であって、推奨ではありません。

11私はこうしています

前章までを踏まえて、私自身が何をしているかを書きます。これは判断の一例であって、推奨ではありません。メーカーの指示とは違うことをしている部分があります。

シールドと帽体

希釈したカーシャンプーと、自動車用のガラスクリーナーをスプレーボトルに入れて使っています。カーシャンプーはワックス入りと無配合の2本あって、そのとき手元にあるほうを使います。ワックス入りのほうが撥水の被膜が残るので、雨の日の視界という点ではむしろ好んで使っています。

マイクロファイバーで一度拭いて、乾いた面で仕上げる。頻度は数か月に一度——雨の中を走って、他車の跳ね上げで汚れたときくらいです。雨上がりには、どのみち拭いて帰ります。

これは第9章の推論に乗った判断です。確かめられてはいません。ただ、接触時間が数秒で、頻度がこの程度なら、割に合うと考えています。

やらないこと

  • 縁とネジまわりを、ときどき見ます。割れが始まるとしたら、そこだからです(第10章)
  • EPSには何もしません。内装がきれいなら、汚れはそこまで届きません

内装は、ほとんど洗っていません

正直に書くと、内装を洗ったのは前のヘルメットで一度きりです。いまのヘルメットでは、まだ一度もありません。片道1時間の通勤で、毎日乗っています。

不精だからではなく——不精でもありますが——洗わなくて済むようにしているからです。次章がその話です。

12ここまでの手間を、減らす

ここまで11章、手間の話をしてきました。いちばん現実的な結論は、手順を覚えることではなく、汗を内装に届かせないことです。

やることはひとつ。バラクラバを1枚かぶる。それだけです。

フルフェイスヘルメットの横に置かれた、薄手のバラクラバとフリース裏地のバラクラバ
夏用と冬用が1枚ずつ。洗うのは、こちらです。

何が変わるか

  1. 汗が内装に届きません。洗うのは布のほうになり、ほかの洗濯物と一緒に回せます。外す・干す・戻すという工程が、まるごと消えます
  2. 内装が洗濯を経験しません。洗えばスポンジは少しずつ痩せます。そしてフィットは安全装備です(第5章)
  3. 顔に当たる面が、毎回きれいです。これは「洗っていない内装」より衛生的です。次章で書きます
  4. 耳栓が外れにくくなります。ヘルメットが耳ではなく布の上を滑るので、被るときに耳栓を引っかけません

4つめは、たぶんいちばん知られていません。耳栓を使っている人なら、被る途中でずれた経験があるはずです。布を1枚挟むだけで、これが起きなくなります。

洗うのは、その日の夜

ほかの洗濯物と一緒に洗って、干して、翌朝には乾いています。1枚あれば回ります。2枚3枚と揃える必要はありません。

選ぶときに見るのは、メッシュの範囲です

バラクラバは、生地の厚みよりも前面のメッシュがどこまで入っているかで季節が決まります。ここを見ずに買うと、冬に失敗します。

夏は、メッシュが広いほうがいい。口と鼻だけでなく首元まで通気があると、走行中に風が入ってきます。

冬は、その同じ構造が裏目に出ます。口と鼻はメッシュでいいのですが、首まで通気があると、そこに冷気が直接当たります。冬用として選ぶなら、メッシュは口と鼻だけ、首から下はフリースという構成のものです。

注意したいのは、「冬用」として売られていてもこの条件を満たさない製品があることです。Kaedearのフェイスカバー(KDR-HD2/HD3)は、製品写真を見るかぎり前面のメッシュが首元まで入っています。夏用としては理にかなった造りですが、冬の防寒として買うと想定と違うことになります。買う前に、正面の写真でメッシュがどこまであるかを見てください。

もうひとつは、丈です

丈は、ジャケットの襟に入れ込める長さがあるかで決まります。短いものは、襟のあるジャケットなら問題ありませんが、襟のないレーシングタイプだと動いているうちに出てきます。長いものは、その余裕がある代わりに、襟の詰まったジャケットだと胸元で生地が余ります。

広告順位でも推奨でもありません。上の2枚は私が実際に使っているもの、下の2枚は使っていません——仕様の違いだけを書いています。

ROCKBROS 夏用 冷感バラクラバ(ホワイト)

確かめられていること
前面がメッシュで、口・鼻・首元まで通気がある。走っていると風が入ってくる。接触冷感の生地で、汗を吸って乾くのが早い。ヘルメットの下でかさばらない。白と黒が選べる。
引き換えに
薄いので、防寒には使えない。冬は別に1枚要る。白のほうが涼しいと思って白にしましたが、ヘルメットに隠れる部分がほとんどなので、体感の差は正直わかりません。見た目の好みで選んで問題ないと思います。

ROCKBROS 冬用 フリースバラクラバ(メッシュなし・丈長め)

確かめられていること
口・鼻も含めて前面がフリース。首から下も裏起毛で、冷気が入る隙間がない。丈が長く、ジャケットの襟に入れ込める余裕がある。色の展開が多い。
引き換えに
口元までフリースなので、真冬以外は暑い。呼気の湿りも、メッシュのものより感じやすい。襟の詰まったジャケットだと、余った生地が胸元でかさばります。

Kaedear インナーキャップ KDR-HD1 — 夏用(私は未使用)

公表されている仕様
接触冷感の生地。鼻部分にメッシュ。首まわりが上のROCKBROSよりやや長めで、ゆったりした作り。首元に少し余裕がほしい人向け。
私は使っていません
着け心地は確かめていないので、書けません。仕様として分かるのは、色が黒のみという点です。

ROCKBROS 冬用 フリースバラクラバ(口・鼻メッシュ/丈短め)— 私は未使用

公表されている仕様
口と鼻だけメッシュで、首から下はフリース。口元がメッシュのほうが息をしやすいと感じる人向け。丈は短めで、襟のあるジャケットと合わせる前提の長さ。
私は使っていません
冬にこのメッシュがどれくらい寒く感じるかは、確かめていません。襟のないレーシングタイプのジャケットだと、丈が短いぶん動いているうちに出てくる可能性があります。

13「洗わないなんて不潔では?」

ここまで読んで、そう思った人がいると思います。もっともな反応です。バラクラバをかぶっても、汗のいくらかは内装まで染みます。

ただ、比べる相手が違うと思います。問いは「洗った内装 vs 洗っていない内装」ではありません。

実際の比較は、こうです

数か月に一度洗う内装と、毎回きれいな布が顔に当たる状態。後者のほうが、顔が触れる面は清潔です。

逆に聞きたいのですが——毎回、乗るたびに内装を洗っていますか。洗っていないなら、顔に当たっているのは、前回の汗が乾いた布です。

いちばんいいのは、毎回洗う人です

これは認めます。乗るたびに内装を洗える人が、いちばん清潔です。乗る頻度が低くて、その手間を厭わないなら、それが最善です。

ただ、毎日通勤で乗る人には現実的ではありません。次善の策として、これは十分に機能します。

ただし、条件がひとつあります

バラクラバを毎回洗うこと。ここが崩れると、全部崩れます。1週間同じものをかぶるなら、内装を洗わないほうがまだましです。

幸い、ここは難しくありません。ほかの洗濯物と一緒に回すだけです。

そして、乾かすほうを忘れないでください

バラクラバが止めるのは、汗が染み込むことです。ヘルメットの中の湿気は、別の問題として残ります(第6章)。毎回きれいな布と、帰ってからシールドを開けておくこと。この2つが揃って、はじめて成立します。

14まとめ

  • 傷の主因は洗剤ではなく砂です。布が触れる前に、流水で落とす。これが手順の全部です
  • シールドは外して洗えます。スプレーして拭くより確実なのは、この一点のためです
  • 内装は中性洗剤で、陰干し。乾燥機は使いません。フィットは安全装備です
  • 臭いの原因は、汗より湿気。帰ったらシールドを開けておく。それだけで大きく変わります
  • 「アルコールはだめ」は、ラベルと合っていません。専用品が20%、市販のウォッシャー液が9〜11%。「ヘルメット用」に共通の処方はありません
  • 専用品ですら除外している場所があります。ミラー、コーティング面、曇り止めの面。ここは水と中性洗剤だけに
  • 拭き取りの安全性は、誰も測っていません。厳しい指示には、素材の理由と、責任範囲の理由が混ざっています。どこまで乗るかは、読む人が決めることです
  • そして、洗う回数は減らせます。バラクラバ1枚。汗は内装に届かず、洗うのは布のほうになります

手入れの話は、突き詰めると走る時間を削らないことに行き着きます。乾かしているあいだに、次の行き先を決めてしまうのがいいと思います。

よくある質問

内装は乾燥機で乾かしてもいいですか?

使わないほうがいいです。内装はスポンジと布と樹脂の台座でできていて、熱はスポンジの厚みと台座の形を変えます。内装の厚みはフィットそのもので、フィットは安全装備です。SHOEIも陰干しで完全に乾かしてから使うよう求めています。急ぐなら扇風機の送風を当ててください。温風ではなく。

食器用洗剤でシールドを洗ってもいいですか?

アライは樹脂パーツに台所用の中性洗剤を挙げているので、洗剤としては問題ありません。ただ、カーシャンプーのほうが向いています。理由はやさしさではなく、泡が滑りを作ることです。粒が挟まったときに、こすらず滑ってくれます。こびりついた虫を落とすときは、食器用洗剤の脱脂力が役に立ちます。

市販のガラスクリーナーは、本当に使ってはいけないのですか?

メーカーは避けるよう書いています。一方で、シールド専用として売られているクリーナーにはアルコールが20%入っている製品もあり、「アルコールだから危険」という説明は製品のラベルと合いません。名指しで挙げられている成分はアンモニアです。ただし、実際の拭き取り条件で何が起きるかを測ったデータは公開されていません。本文の第7章から第10章で、分かっていることと分かっていないことを分けて書いています。

ミラーシールドや撥水コートをした面は、どうすればいいですか?

水と薄めた中性洗剤だけにしてください。ここは表面の膜そのものが機能なので、専用品ですら除外しています。タナックスのシールドクリーナーPG-211は「ミラーシールド及びコーティング済みのシールドには使用しないでください」と明記しています。

バラクラバは何枚必要ですか?

季節ごとに1枚ずつあれば足ります。夜にほかの洗濯物と一緒に洗えば、翌朝には乾いています。乗る頻度が高くても、乾く速さのほうが上回るので、ローテーション用に何枚も揃える必要はありません。

内装を洗う頻度の目安はありますか?

SHOEIは月に一度の手入れを習慣にすることを勧めています。バラクラバを使っているなら、汗が内装まで届かないぶん、間隔は延びます。目安の日数で決めるより、匂いが出たときと、雨や汗でしっかり濡れたときに洗う、という決め方のほうが現実的だと思います。