コンクリートの床に置かれた、赤・白・黒のレーシングブーツ。シャフトの内側に白い縫い付けラベルが見え、つま先の金属スライダーには擦り傷がある
目次(タップで開閉)
  1. 1. ヘルメットの次は、ブーツとグローブ——私の順番と、その理由
  2. 2. 転び方から逆算する——ローサイド、横からの衝突、とっさに出る手
  3. 3. ジャケットとグローブで止まる理由——降りたあとも履くもの
  4. 4. 「ライディングブーツ」と名乗るのに、試験はいらない
  5. 5. EN 13634:2017の4つの数字
  6. 6. どの数字が、どの事故に効くのか——そして規格が試験していないこと
  7. 7. ラベルの読み方——「CE」の文字と、4つの数字は別物
  8. 8. 見た目と数字は一致しない——私のブーツのラベル
  9. 9. 私の場合——9足のブーツと、いちばん履いている1足の「分からない」
  10. 10. 合わないブーツは、履かなくなる——足の形、留め具の側、シフト操作
  11. 11. 雨と、降りてからの時間——防水はシャフトの高さで決まる
  12. 12. まとめ——店で見るのは3つ、決めるのはあなたです

ヘルメットの次に、ジャケットとグローブ。そこで止まって、足元はスニーカーやふだんの靴、という人は多いと思います。

無理もありません。ジャケットとグローブは、着いたら脱げます。ブーツは、降りたあとも履いたままです。

この記事では、まず、私がなぜブーツをジャケットより先に置くのかを書きます。そのうえで、ブーツのCE規格が何を試験していて、何を試験していないのかを、ラベルの4つの数字から読みます。

試験の記録がないブーツで転べば、そのブーツがどこまで耐えるかを確かめるのは、あなたの足です。

1ヘルメットの次は、ブーツとグローブ——私の順番と、その理由

装備にお金をかける順番を、私はこう考えています。ヘルメット、ブーツとグローブ、パンツ、ジャケット。

ヘルメットは、法律で決まっていて、誰でもかぶっています。問題は、その次です。

先に断っておくと、これは命を守る順番ではありません。死亡事故で多いのは、頭と胸です。警察庁の令和3年〜7年の集計で、二輪車乗車中の死者の損傷主部位を見ると、頭部が37.9%です。胸部が30.2%で続きます(バイクウェアの記事の§2)。胸を守るのは、ジャケットと胸部プロテクターです。そこを軽く見てほしいわけではありません。

パンツ(脚のプロテクター)をジャケットより先に置くのも、この記事と同じ理由です。転んだときに先に当たるのも、けがをした人に多いのも、脚だからです。詳しくは、バイクウェアの記事の§2に書きました。

私が見ているのは、いちばん起きやすいけがと、後に残りやすいけがです。

けがをした人の側から見ると、多いのは手足です。広島県の資料は、令和元年〜5年の自動二輪車の事故について、負傷者の損傷主部位は腕部や脚部が多い、と書いています。欧州の詳しい事故調査(MAIDS)のイタリア分の200人では、いちばん多くけがをしていたのは下肢で、29.3%でした。米国の道路交通安全局(NHTSA)も、2008年の報告で、外傷センターで治療を受けたライダーのけがは下肢が最も多かったとしています。

足首、足の甲、手首、指。小さな骨と関節が集まっている場所です。こうした場所のけがは、骨がついても動きが元どおりに戻るとは限らない、と私は考えています。死ななくても、その後の暮らしが変わるけがです。

守るためにジャケットとグローブを身につけるなら、同じ理屈で、ブーツも同じだけ大事なはずです。転んだときに先に当たり、けがをしやすいのは、足のほうだからです。

ジャケットを着て、足元はスニーカー。守るための装備としては、理屈が合っていません。

2転び方から逆算する——ローサイド、横からの衝突、とっさに出る手

なぜ足と手なのか。よくある転び方を思い浮かべてみてください。

ローサイド。タイヤが滑って、バイクが倒れたまま路面を滑っていきます。最初に地面に着くのは、下になった側の足とひざです。足がバイクの下に挟まれることもあります。

横からの衝突。交差点で、横から車に当てられる。最初に当たるのは、バイクの横に出ている足と脚です。いちばん強い衝撃も、そこが受けます。

どんな転び方でも。倒れる瞬間、人はとっさに手をつきます。考えてからでは間に合いません。手のどこがどう壊れるかは、グローブの記事にまとめました。

ここから、私が装備を選ぶときの考え方が出てきます。守りたいけがから逆算する。どこが、どう壊れるのか。それを守るのは、どの装備のどの性能か。快適さや見た目とどこで折り合うかは、そのあとで決めます。

バイク用の装備を身につける理由は、守るためです。それ以外が理由なら、ふつうの服で足ります。それなのに、選ぶ理由が見た目から始まって、見た目で終わることがあります。そして、その順番を考え直すのは、たいてい転んだあとです。

3ジャケットとグローブで止まる理由——降りたあとも履くもの

ジャケットとグローブで装備が止まる理由は、分かる気がします。

ジャケットとグローブは、着いたら脱げます。カフェに入るときも、店の中を歩くときも、ふつうの格好に戻れます。ブーツとパンツは、そうはいきません。降りてからも、ずっと身につけたままです。

だから、ブーツとパンツは、見た目で選ばれやすくなります。店の中で浮かないか。歩いて疲れないか。これも、正当な理由です。

ただ、その結果、見た目を優先した選び方が、いちばんけがをしやすい足に集まります。§1の順番を私が気にするのは、そのためです。

4「ライディングブーツ」と名乗るのに、試験はいらない

日本には、バイク用ブーツの安全基準がありません。国の安全基準(PSC)の対象は乗車用ヘルメットだけで、ブーツもグローブもウェアも入っていません(グローブの記事の§12)。

欧州は違います。保護のためのバイク用ブーツは、EUのPPE規則(2016/425)の対象です。英国の試験機関SATRAによれば、メーカーは公認の試験機関(Notified Body)による型式検査を受ける必要があります。その試験でふつう使われる規格が、§5で読むEN 13634です。

日本の売り場では、「ライディングブーツ」と書くのに、何の試験も求められていません。くるぶしにパッドの膨らみがあれば、それらしく見えます。ふつうの革ブーツでも、見た目が合っていれば「ライディングブーツ」として売れてしまいます。

ここで言いたいのは、試験されていないブーツが危険だ、ということではありません。分からない、ということです。

ふつうのブーツにも、意味はあるかもしれません。オーストラリアで転倒したライダー212人を調べた研究があります(de Romeら、2011年)。バイク用ではないブーツでも、靴やスニーカーに比べて、けがのリスクが低いことと関連していた、という結果です。

ただ、それは「スニーカーよりはまし」かもしれない、という話です。そのブーツが路面の上で何秒もつのか、バイクの重さでどこまでつぶれるのか。試験されていなければ、誰にも分かりません。

5EN 13634:2017の4つの数字

CE規格のバイク用ブーツには、ラベルに4つの数字が並びます。左から、高さ、耐摩耗、耐切創、横方向の剛性です。それぞれ1か2で、2のほうが厳しい基準を超えています。

数字何を見ているかレベル1レベル2
1つ目:高さブーツの筒(シャフト)の高さ低い(くるぶしまで)高い(すねまで)
2つ目:耐摩耗研磨ベルトに落として、穴があくまでの時間ゾーンA 1.5秒以上/ゾーンB 5秒以上ゾーンA 2.5秒以上/ゾーンB 12秒以上
3つ目:耐切創刃を落としたとき、どこまで切れ込むかどちらのゾーンも25mm以下ゾーンBは15mm以下
4つ目:横方向の剛性横から押しつぶすのに必要な力1.0kN以上1.5kN以上

数字の出どころは、iXSが製品に付けている説明書(EN 13634:2017)です。高さの「くるぶしまで/すねまで」は、英国の販売店の説明によります。

少しだけ補足します。

レベルは、どうやって決まるのでしょうか。英国の販売店の説明を読む限り、「レベル1の試験」と「レベル2の試験」が別々にあるわけではありません。

どの項目も、同じ試験で結果を測ります。その結果が、どちらの基準を超えたかで、レベルが決まります。高さは試験ではなく、筒の高さを測るだけです。

耐摩耗では、素材を3枚切り出して試験します。数字を決めるのは、いちばん早く穴があいた1枚です。平均ではなく、いちばん弱い結果です。

耐摩耗は、ブーツから切り出した素材を、動いている研磨ベルトに落とし、穴があくまでの秒数を測る試験です。グローブで使われているのと同じ系統の試験で、グローブの記事の§8で書いた「時速28kmのベルト」の話です。ゾーンは部位の区分で、Bのほうが長い時間を求められます。

耐切創は、刃を秒速2.0m(ゾーンA)と2.8m(ゾーンB)で落とします。

横方向の剛性は、足の甲の位置で靴を横から挟み、ゆっくり押しつぶす試験です。英国の販売店の説明によれば、靴底を20mmまで押しつぶすのに必要な力が1.0kN未満なら不合格、1.5kN以上ならレベル2です。1.0kNは、約100kg分の重さです。

レベル1とレベル2の意味について、規格はこう書いています(説明書から、私訳)。

レベル1は、事故で役に立つ保護を与えるために必要な最低限とみなされ、どんな乗り方にも合う、最適な快適さの靴になる。乗り方や競技によって事故のリスクが高いと感じるライダーのために、レベル2がある。ただし、この保護には重さと快適さの犠牲がともなうことが多く、すべてのライダーに受け入れられるとは限らない。

レベル1は、「足りない」という意味ではありません。規格が最低限として線を引いた場所です。

6どの数字が、どの事故に効くのか——そして規格が試験していないこと

4つの数字を、§2の転び方に重ねてみます。

起きること効く数字
倒れたまま路面を滑る2つ目の耐摩耗
割れた部品や路肩の鋭い角に当たる3つ目の耐切創
足がバイクの下に挟まれる、横からつぶされる4つ目の横方向の剛性
くるぶしやすねに直接当たる1つ目の高さ(どこまで覆っているか)

4つの数字のほかに、追加の記号が付くことがあります。

  • IPA:くるぶしの衝撃保護
  • IPS:すねの衝撃保護
  • WR:防水
  • ほかに、靴底の耐油(FO)や滑りにくさ(SRA・SRB・SRC)など

英国の販売店の説明によれば、IPAとIPSは、プロテクターに10Jの衝撃を与え、伝わる力が5kN以下であることを確かめる試験です。

そして、ここが大事なところです。iXSの説明書には、こう書かれています(私訳)。

このブーツは、曲がり、ねじれ、ひねり、極端な動きによる外傷に対する保護を保証できない。また、物に当たってつぶされることも防げない。

足首をひねって折る、という起き方は、4つの数字のどれにも入っていません。バイクと路面のあいだでつぶされることも、防げるとは書かれていません。規格が試験しているのは、摩耗と切創と横からの力、そして高さです。それ以外は、レベル2でも分かりません。

同じ説明書は、事故で衝撃を受けたブーツは見た目に傷がなくても替えること、傷んでいなくても少なくとも5年ごとに替えることを勧めています。

7ラベルの読み方——「CE」の文字と、4つの数字は別物

EN 13634:2017 規格の番号と年 2 2 2 1 高さ 摩耗 切創 横の剛性 IPA IPS WR ① 規格の番号と年 「CE」の文字だけでは分からない ② 4つの数字 それぞれ1か2。2のほうが厳しい基準 左から、高さ・摩耗・切創・横の剛性 ③ 追加の記号(ある場合) IPA くるぶし/IPS すね/WR 防水
ラベルの例(架空)。数字は左から、高さ、耐摩耗、耐切創、横方向の剛性。

ラベルは、たいていブーツの内側、シャフトの裏やベロの裏に縫い付けられています。

見るのは、3つです。

  1. EN 13634という規格の番号があるか。「CE」の文字だけでは、どの規格に通ったのかは分かりません。
  2. 規格の年。2017年版より前のEN 13634:2015には、全体のレベルを1つにまとめる表示がありました。2017年版で、それはなくなっています。
  3. 4つの数字と、追加の記号。

ネットで調べて分かったことが、1つあります。4つの数字は、ネットではほとんど見つかりません。

私が履いてきたブーツのうち、CE規格がある(か、あるとされている)のは8足です。メーカーや販売店のページを調べたところ、4つの数字まで載っていたのは2足だけでした。ほかの6足は、「EN 13634:2017認証」とだけ書かれているか、「CE認証」とだけ書かれていました。古い規則(89/686/EEC)でのCE認証と書かれていたものもあります。

数字が載っていても、メーカーと販売店で食い違うことがあります。REV'ITのMohawk 3は、REV'ITのページでは2・2・2・2、ドイツの販売店FC-Motoのページでは2・2・2・1です。私のブーツのラベルは、2・2・2・1でした。メーカーのページのほうが、横方向の剛性を1つ高く書いていたことになります。

4つの数字を確かめられる場所は、結局、ブーツのラベルです。店で手に取れるなら、ベロをめくって見てください。

ただ、ラベルにさえ数字がないことがあります。私のMocha Knightのラベルには「EN 13634:2017」とだけあって、4つの数字はありません(§9)。

8見た目と数字は一致しない——私のブーツのラベル

私が自分のブーツのラベルで読んだ数字を並べます。

ブーツ見た目高さ耐摩耗耐切創横の剛性
Held Epco 3レーシングブーツ2122
iXS 2-Zip SYM 2.0雨用の長いツーリングブーツ2222
Oxford Kickback Airスニーカーのような短いブーツ1121
REV'IT Mohawk 3モックトゥの革ブーツ2221

Oxfordの数字は、販売店のページの表示(女性用モデル)とも一致しました。

いちばんレーシングブーツらしい見た目のHeld Epco 3が、耐摩耗はレベル1です。ふだん履きに見えるMohawk 3は、耐摩耗も耐切創もレベル2です。スニーカーのようなOxfordも、耐切創はレベル2でした。

これは、Heldのブーツが悪いという話ではありません。4つの数字は、そのブーツの守りの全部ではないからです。くるぶしやすねのプロテクター、つま先のスライダーは、4つの数字の外にあります。

言いたいのは、見た目から数字は読めない、ということです。ゴツいから摩耗に強い、とは限りません。ふつうの靴に見えるから弱い、とも限りません。

9私の場合——9足のブーツと、いちばん履いている1足の「分からない」

ここからは、私自身の話です。これまでにバイクで履いてきたブーツは、9足です。

ブーツCE規格ひとこと
Cortech Latigo Air RR見つからず2011年、オーストラリアの大学生のころの通勤用。筒が高く頑丈で、ジッパーが大きく開く。歩くと硬い
TCX Mood Gore-TexEN 13634(数字は非公開)スニーカーのような履き心地。1年ほどで靴底が割れた
Alpinestars Parlor Drystar89/686/EEC(数字は非公開)水が入った。表面はコーティングが厚く、触っても革らしさがなかった
Falco Gordon 2EN 13634:2017(数字は非公開)ふだんのブーツに見える。足の形が合わなかった
Held Epco 32・1・2・2(ラベル)着脱が楽で、見た目もいい。足の形が合わず、売った
iXS 2-Zip SYM 2.02・2・2・2(ラベル)大雨でも乾いていた。シフトが操作しにくい
Oxford Kickback Air1・1・2・1(ラベル)硬いところと曲がるところの具合がいい。長さが合わない
Mocha Knight(MK-SHK109)EN 13634:2017、数字なし(ラベル)週末のメイン
REV'IT Mohawk 32・2・2・1(ラベル)通勤のメイン

「(ラベル)」とあるのは、私が自分のブーツのラベルで読んだ数字です。それ以外は、メーカーや販売店のページで、そのモデル名について書かれていたことで、私が持っていた個体のラベルではありません。

いま週末にいちばん履いているのは、Mocha Knightというブランドのレーシングブーツです。AliExpressで買いました。通気の穴があいた夏用です。

気に入っているところは、たくさんあります。すねまで覆う長さ。しっかりしたマイクロファイバーの作り。留め具が脚の外側にあること。取り外せないインナーブーツを、クイックレースで締められること。引きひもをスライド式の留め具で止めるので、結ばずに足にぴったり合わせられます。ひもの先はマジックテープで内側に留まるので、脱ぐときもすぐ見つかります。EUサイズ43で、つま先が窮屈になりません。つま先とかかとのスライダーは金属で、高いブーツでも樹脂のものが多い中、ここは珍しいと思います。内側には柔らかいスエードのような素材が貼ってあって、バイクを傷つけません。通気は、高速道路ではっきり分かるほど効きます。

見た目は、有名ブランドの高級レーシングブーツによく似ています。値段は、それよりずっと安く買えました。

分からないのは、どこまで守れるかです。このモデルを扱うある販売店のページには「CE認証」とありますが、どの規格かは書かれていません。私のブーツのラベルには「EN 13634:2017」とあります。ただ、4つの数字がありません。規格の表示では、番号と年のあとに4つのレベルが並ぶはずです(iXSの説明書)。どのレベルで通ったのかは、ラベルからは読めません。

作りと素材を見るかぎり、CE規格のあるカジュアルなライディングシューズの多くよりは、持ちこたえるだろうと私は思っています。でも、分かりません。転んで確かめたことはありません。

使い始めて3か月です。いちばん長い時間を足に預けているブーツの守りを、私は数字で言えません。そのリスクは、分かったうえで引き受けています。

10合わないブーツは、履かなくなる——足の形、留め具の側、シフト操作

9足を履いて分かったことがあります。守りの数字より先に、合うかどうかでブーツは決まります。

私が手放したり、使わなくなったりしたブーツの理由は、守りの性能ではありませんでした。

  • 足の形。Held Epco 3は、かかととくるぶしまわりがゆるく、つま先側が細く感じました。私の足は幅が広めです。幅の細い足の人のための形だと思います。Falco Gordon 2も、EUサイズ43ではゆるく、42だと窮屈だったと思います。
  • 留め具の側。Held Epco 3は、ジッパーと面ファスナーのフラップが脚の内側にあり、フラップがバイクに引っかかることがありました。それ以来、パンツの外に出して履くブーツは、留め具が外側にあるものにしています。
  • シフト操作。iXS 2-Zip SYM 2.0は、つま先まわりが分厚く、シフトペダルの操作がしにくくなりました。ペダルの位置を調整しても、解決しませんでした。
  • 当たり。REV'IT Mohawk 3は、内張りが薄く、つま先の芯の縁が、歩くたびに足の甲に当たります。それでも、いま通勤で履いているのはこのブーツです。オリーブ色のプルアップレザーで、見た目はふつうの革ブーツです。職場ではほとんど歩かないので、困っていません。

サイズの表記も、当てになりません。私はふだん、スニーカーで米国サイズ9です。TCXの表ではEUサイズ43が米国9でしたが、iXSとOxfordの表では、EUサイズ43が米国10でした。同じ43でも、合い方はブーツごとに違いました。

グローブの記事で、「着けないグローブの保護性能は、ゼロ」と書きました。ブーツも同じです。合わなくて履かなくなったブーツは、レベル2でも、足を守りません。

できるなら、履いて、バイクにまたがって確かめてください。

  • シフトペダルとブレーキペダルを、無理なく操作できるか。
  • バイクに引っかかったり、こすれて傷をつけたりしそうな所はないか。留め具やフラップ、バックルの位置も見ます。
  • ひものあるブーツなら、ひもがペダルやステップに引っかからないか。止まったときに足を出せなくなるおそれがあり、危険です。

私も、Oxford Kickback Airで何度かひやりとしました。ひもが長すぎて、結び目から垂れた先が、シフトペダルに引っかかったのです。左足を小さく動かすと、きれいに外れました。止まる直前に、なんとか足を下ろせました。転んだことはありません。何度か続いたので、短いひもに替えて、垂れる分を減らしました。

降りてからも履くなら、店の中を歩いてみてください。乗っているとき、立っているとき、歩いているときで、履き心地は変わります。

11雨と、降りてからの時間——防水はシャフトの高さで決まる

ブーツ選びで、もう1つ見落としやすいのが雨です。

TCX Mood Gore-Texは、防水のブーツでした。それでも、肝心なときに足が乾いていたことはありません。筒が低く、上から水が入ってきたからです。Alpinestars Parlor Drystarも筒が短く、上からだけでなく、ほかのところからも水が入りました。

iXS 2-Zip SYM 2.0は、大雨の中を1時間走っても、足は乾いていました。筒が高く、雨用のパンツをかぶせられたからです。

防水かどうかは、ブーツの膜だけでは決まりません。筒の高さと、パンツとの重なりで決まります。

短いブーツやライディングシューズにも、防水の膜が入ったものがたくさんあります。でも、雨の中を実際に走れば、水は筒の上から簡単に入ってきます。

膜があると、むしろ通気が悪くなります。入った水は、なかなか乾きません。長く走った日や暑い時期には、中がかび臭くなり、においが出てきます。

寒い時期には、役に立つこともあると思います。それ以外では、私には、仕様表を飾るためのものに見えます。仕様表だけを見て買う人に、売るためです。

雨や寒い日にも走るなら、そのための防水ブーツを別に用意することを、私はすすめます。乗った姿勢でも、パンツの裾が上にかぶさる高さのものです。

それ以外の日は、防水でないブーツのほうが快適です。通気がよく、足が涼しく、脱いだあとも早く乾きます。私も、雨や寒い日にだけ履く防水ブーツを、別に持っています。

降りてからの時間も、ブーツ選びの一部です。TCX Mood Gore-Texは、ほとんどスニーカーのような履き心地で、革もよいものでした。1年ほどで靴底が割れ、バイクでは履かなくなりました。そのあと2年ほど、ふだんの靴として履きました。靴底以外は、まだ使えそうに見えました。

短いライディングシューズは、高さがレベル1になります。すねは覆いません。それを分かったうえで選ぶなら、それも1つの答えです。

12まとめ——店で見るのは3つ、決めるのはあなたです

この記事で並べたことを、店で使える形にまとめます。見るのは、3つです。

  1. ラベルに、EN 13634と4つの数字があるか。ページの「CE」の文字だけでは、どの規格に通ったのかは分かりません。
  2. 自分の乗り方に効くのは、どの数字か。滑る距離が長いなら耐摩耗、バイクの下敷きが心配なら横方向の剛性、すねまで守りたいなら高さ。
  3. 足とバイクに合うか。履いてまたがり、ペダルを操作する。引っかかりそうな所がないか、ひもも含めて見る。降りても履くなら、歩いてみる。

2・2・2・2でなくてもかまいません。私も、全部をそろえてはいません。

ただ、自分の足がいまどれだけ守られていて、どれだけのリスクを引き受けているのか。それを知ったうえで選ぶのと、知らずに選ぶのとでは、まったく違います。

選ぶのは、あなたです。

ブーツが決まったら、次は行き先です。Japan Bike Cafeは、駐車場とアクセス路の路面がわかるツーリング先を、現在地や都道府県から検索できるディレクトリです。

よくある質問

CE規格のないライディングブーツは危険ですか。

危険とは限りません。ただ、どこまで守れるかを示す試験の記録がありません。日本にはバイク用ブーツの安全基準がなく、「ライディングブーツ」と名乗るのに試験はいりません。確かめられるのは、ラベルにEN 13634と4つの数字があるかどうかです。

EN 13634の4つの数字は、何を表していますか。

左から、高さ、耐摩耗、耐切創、横方向の剛性(つぶれにくさ)です。それぞれ1か2で、2のほうが厳しい基準を超えています。ラベルには「2 2 2 1」のように並んでいます。

レベル1とレベル2の違いは何ですか。

規格は、レベル1を事故で役に立つ保護の最低限とし、レベル2を事故のリスクが高いと感じるライダー向けとしています。たとえば横方向の剛性は、レベル1が1.0kN以上、レベル2が1.5kN以上です。レベル2は、重さや快適さと引き換えになりやすいともされています。

普通の革ブーツでバイクに乗っても大丈夫ですか。

スニーカーよりはましかもしれません。オーストラリアで転倒したライダー212人を調べた研究があります。バイク用ではないブーツでも、靴やスニーカーよりけがのリスクが低いことと関連していました。ただ、そのブーツが路面でどこまで耐えるかは、試験されていないので分かりません。

ライディングシューズでも足は守れますか。

CE規格のあるライディングシューズもあります。ただ、短い靴は高さがレベル1で、すねは覆いません。私のスニーカーのようなブーツは、1・1・2・1でした。何を手放しているかを知ったうえで選んでください。

IPAとIPSは何ですか。

4つの数字とは別の、追加の試験に通ったことを示す記号です。IPAはくるぶし、IPSはすねの衝撃保護です。ほかに、防水を示すWRなどの記号もあります。