作業台に置かれた、オレンジの差し色が入った黒いメッシュのバイクジャケット。肘のポケットからプロテクターが半分引き出され、襟の内側に文字の読めない白い縫い付けラベルが見える
目次(タップで開閉)
  1. 1. 店では、保護性能だけが確かめられない
  2. 2. 「ヘルメットがあるから大丈夫」——死因の3割は胸
  3. 3. 衝撃と滑走——体の壊れ方は2種類ある
  4. 4. CEレベル1・2が試験していること——5kgの重りを1mから
  5. 5. 時速30kmは、3.5mの高さから落ちるのと同じ
  6. 6. AAA・AA・Aの違い——EN 17092が試験していること
  7. 7. その等級は、メーカーが申請した試験の結果です
  8. 8. MotoCAP——CE認証品でも、実測の星はばらつく
  9. 9. 「レザーはサーキット用」は逆です
  10. 10. CEラベルの読み方——「CE規格プロテクター付き」は服の認証ではない
  11. 11. 私の場合——季節で着るものを変え、走り方も変えている
  12. 12. まとめ——店で見るのは3つ、決めるのはあなたです

Tシャツにジーンズ。シャツの下には、胸と肘のパッド。ヘルメットは、いいものをかぶっている。峠の駐車場で、よく見かける格好です。

本人は、守っているつもりです。ヘルメットがあって、プロテクターも着けている。でも、その格好で時速30kmで転んだら、体のどこが、どれくらい守られるのか。それを答えられる人は、ほとんどいないと思います。

答えられないのは、本人のせいではありません。日本では、それを答えるための情報が、ほとんど売り場に出ていないからです。この記事では、数少ない手がかりであるCE規格が、実際に何を試験しているのかを、数字で読みます。

試験の記録がない服で転べば、その服がどこまで耐えるのかを確かめる試験台は、あなたの体になります。

1店では、保護性能だけが確かめられない

バイク用品店でジャケットを試着すると、分かることはたくさんあります。肩まわりがきつくないか。腕を前に出したときに袖が上がらないか。ベンチレーションは効きそうか。重さ、見た目、ポケットの数。どれも、その場で自分で確かめられます。

確かめられないものが、ひとつだけあります。転んだときに、どれだけ体を守るかです。生地を触っても、縫い目を見ても、それは分かりません。

ヘルメットには、消費生活用製品安全法のPSCマークがあります。基準に適合していなければ、日本では売れません。ところが、同じ法律の対象に、ジャケットやパンツ、プロテクターは入っていません。日本で「バイク用」として売るために、通さなければならない試験は存在しないのです。このことは、グローブの記事の§12で詳しく書きました。

誤解のないように書きます。試験を受けていない服が、危ないとは限りません。しっかり作られた製品も、きっとあります。問題は、それが分からないことです。

CE規格の表示があれば、少なくとも「第三者が定めた基準で試験をして、通った」という記録があります。それが優れているという意味ではありません。それでも、記録がまったくないことと比べれば、大きな違いです(グローブの記事の§10)。

2「ヘルメットがあるから大丈夫」——死因の3割は胸

ヘルメットは大事です。それは間違いありません。ただ、ヘルメットが守るのは頭だけです。

警察庁の集計では、2021年から2025年までの5年間に二輪車に乗っていて亡くなった人は2,369人。致命傷になった部位は、頭部が897人(37.9%)、胸部が715人(30.2%)、頸部が193人(8.1%)でした。胸は、頭に次ぐ2番目です。東京都内の数字でも、傾向は同じです。警視庁によれば、都内の過去5年平均は頭部43.2%、胸部29.2%です。

頭も、ヘルメットだけで守りきれるとは限りません。頭部の損傷で亡くなった人のうち、ヘルメットをかぶっていた人の約4割は、事故のときにヘルメットが脱げていました。

それに対して、胸部プロテクターの着用率は10.8%。警視庁が2026年7月から8月に、都内で3,520人に聞き取った結果です。ヘルメットはほぼ全員がかぶっているのに、胸を守っている人は10人に1人です。

警察庁は、高速道路での事故について、胸部プロテクターの有無で比べた数字も出しています。死傷者のうち亡くなった人の割合(致死率)は、着用ありで11.3%、着用なしで14.1%。約1.2倍でした(2021〜2025年、エアバッグ式を含む)。着けている人と着けていない人では走り方も違うかもしれないので、プロテクターの効果だけを表す数字ではありません。

ヘルメットにできることと、できないことは、ヘルメットの記事の§13にまとめました。この記事は、その続きです。首から下の話をします。

3衝撃と滑走——体の壊れ方は2種類ある

バイクから投げ出されたとき、体が受けるダメージは大きく2種類あります。

ひとつは衝撃です。路面や、ガードレール、車に体が打ちつけられる。骨が折れ、関節が壊れ、内臓が傷つく。これを和らげるのが、肩・肘・膝・背中・胸に入れるプロテクターです。

もうひとつは滑走です。体が路面の上を滑る。アスファルトは、粗いヤスリと同じです。皮膚が削れ、その下の脂肪が削れ、さらに下が出てきます。これを止めるのは、ウェアの生地と縫い目です。生地がどれだけ擦れに耐えるか。縫い目がほどけずに、生地をつなぎ止めておけるか。

プロテクターが擦れに弱い、という話ではありません。表面が硬く、擦れにもある程度耐えるものが多いと思います。ただ、それはプロテクターが決まった位置に留まっていれば、の話です。プロテクターを留めているのは、服です。服の生地や縫い目が先に破れれば、プロテクターはずれたり、外に出たりして、守るはずの場所から外れます。EN 17092が、生地と縫い目に加えて、プロテクターの位置も試験の対象にしているのは、そのためだと私は考えています。

Tシャツの下にパッドを着けた格好は、このうち衝撃の、それもパッドがある場所だけを受け持っています。パッドのない場所も、滑走も、Tシャツとジーンズに任されています。Tシャツが破れれば、パッドも、その場所に留まっていられません。ヘルメットの記事でも書いたとおり、今日着ているもので、腕や脚にディスクグラインダーを当てられるかを考えてみてください。

この2つは、規格も分かれています。プロテクターはEN 1621、ジャケットやパンツはEN 17092です。順に見ていきます。

4CEレベル1・2が試験していること——5kgの重りを1mから

肩・肘・膝・腰のプロテクターの規格が、EN 1621-1です。試験はシンプルで、台の上に置いたプロテクターに、5kgの重りを約1mの高さから落とします。衝撃のエネルギーは50J。そして、プロテクターの下に伝わった力を測ります。

合格の線は、2段階です。

規格部位レベル1レベル2
EN 1621-1肩・肘・腰・膝平均35kN以下(どの1回も50kNを超えないこと)平均20kN以下(どの1回も30kNを超えないこと)
EN 1621-2背中18kN未満9kN未満

試験:5kgの重りを約1mから落とす(50J)。数字は、プロテクターの下に伝わった力の上限。

レベル2は、レベル1より平均の上限が約43%低い、ということです。上限が小さいほど、体に届いてよい力は小さくなります。

ここで、数字をもう一度見てください。レベル2は、この試験で下に伝わる力を、平均20kN以下に抑えたという意味です。20kNは、約2トンの重さに相当する力です。一瞬ではありますが、5kgの重りを1mから落としただけでも、それだけの力が抜けてくることは許されています。レベル1なら約3.6トン分です。

プロテクターは、衝撃を消すものではありません。減らすものです。そして、その減らし方の基準が、この数字です。

5時速30kmは、3.5mの高さから落ちるのと同じ

プロテクターの試験の50Jは、5kgの重りを約1mから落としたときのエネルギーです。では、実際に転んだとき、体はどれくらいのエネルギーを持っているのでしょうか。

体重と装備を合わせて75kgのライダーが、時速30kmで走っているとします。このときの運動エネルギーは、約2,600Jです。プロテクターの試験の約52倍。5kgの重りで言えば、53mの高さから落とすのと同じです。

速さを、同じエネルギーになる落下の高さに直すと、こうなります。

転んだ体のエネルギーと、プロテクターの試験のエネルギー CEの試験 50J(5kgを約1mから) 時速30km 約2,600J・試験の約52倍・高さ3.5m 時速50km 約7,200J・約145倍・9.8m 時速60km 約10,400J・約208倍・14.2m 時速100km 約28,900J・約579倍・39.3m 体重と装備で75kgのライダーの運動エネルギー。高さは、同じエネルギーになる落下の高さです。 時速30kmでも、CEの試験の約52倍のエネルギーです。
試験の条件はEN 1621-1(5kgを約1mから、50J)。ライダーの数字は、体重と装備を合わせて75kgとした計算値です。このエネルギーが、全部ひとつの関節にかかるわけではありません。

正直に書いておきます。このエネルギーが、全部ひとつの関節に集まるわけではありません。路面を滑っていけば、エネルギーの多くは擦れて熱になって消えます。だからこそ、滑走に耐えるウェアが大事なのです。

ただし、滑った先に電柱やガードレール、縁石、止まっている車があれば、話は変わります。そのとき体は、試験の何十倍ものエネルギーを持ったまま、ぶつかります。プロテクターが受け止めるのは、その一部です。CEレベル2は、そこで体を無傷にするための基準ではありません。

6AAA・AA・Aの違い——EN 17092が試験していること

ジャケット、パンツ、つなぎの規格が、2020年に発行されたEN 17092です。等級は5つあります。

まず、体を3つのゾーンに分けます。ゾーン1は、肩・肘・膝・腰など、最も擦れやすい場所。ゾーン2は、腕や脚の外側、背中、お尻、脇腹。ゾーン3は、胸の前や、腕と脚の内側です(IXONの説明より)。

摩耗の試験は、ダルムシュタット式と呼ばれる機械で行います。試験片をアームの先に付けて所定の速さまで回し、駆動を切ってからコンクリートの面に落とします。あとは、止まるまで擦れ続けます。3枚の試験片のどれにも、5mmを超える穴があかなければ合格です。

等級の違いは、主にこの速さです。

等級規格ゾーン1ゾーン2ゾーン3肩・肘・腰・膝のプロテクター
AAAEN 17092-2約120km/h約75km/h約45km/h必須
AAEN 17092-3約70km/h約45km/h約25km/h必須
AEN 17092-4約45km/h約25km/h試験なし必須(腰は任意)
BEN 17092-5Aと同じAと同じ試験なしなし
CEN 17092-6———プロテクターのみ(摩耗の試験なし)

速さは、試験機の回転数を走行速度に換算した目安(Centexbel、Dainese)。

これは、試験機の上で回る小さな試験片の速さです。時速120kmで路面を滑っても無事、という意味ではありません。

摩耗のほかに、縫い目の強さと、生地の引き裂き強さも試験されます。AAAの試験報告書に載っている基準では、縫い目はゾーン1と2で12N/mm、ゾーン3で8N/mm。引き裂き強さは、ゾーン1と2で50N、ゾーン3で35Nです。下の等級ほど、この基準も低くなります(たとえばAのゾーン2の縫い目は6N/mm)。

各社は「AAAはレース向け、AAはツーリング向け、Aは街乗り向け」のように説明しています。ただ、規格が決めているのは用途ではなく、試験の速さと強さです。時速45kmで止まるまで擦って穴があかないことと、時速120kmから止まるまで擦っても穴があかないことは、まったく別の話です。

7その等級は、メーカーが申請した試験の結果です

ここが、ラベルを読むうえで、いちばん知っておいてほしいところです。

英国の試験機関SATRAは、メーカーは用途に応じて、どの規格で試験を受けるかを選ぶと説明しています。公開されている試験報告書の例を見てみます。欧州のメーカーが、レザーのジャケットとパンツをEN 17092-2(AAA)で申請したものです。試験をしたのは、スペインのEurofinsです(2025年)。試験に出されたのは、メーカーが用意したジャケットとパンツです。報告書の結果欄には、項目ごとに「M(適合)」と並んでいます。どれだけ基準を上回ったかの数字は、載っていません。

つまり、等級はこういうものです。

  • メーカーが、どの等級で試験を受けるかを決める。
  • その等級の基準で試験をして、通ったか、通らなかったかが決まる。
  • どれだけ余裕を持って通ったかは、ラベルからは分からない。

Aのジャケットは、Aの速さでしか試されていません。AAの速さで試したら通ったのかもしれないし、通らなかったのかもしれない。買う側には、それを知る方法がありません。

等級は、生地だけでなく、服全体で決まります。英国のバイク保険会社Bennettsのメディアは2020年、こんな例を伝えています。プロテクターを入れていない防護ジーンズは、クラスBとして認証されていました。メーカーによれば、生地と裏地だけなら摩耗ではAAA相当だといいます。別のジーンズは、補強の裏地が全面に入っていないために、AAAではなくAAになっていました。

だから、下の等級だからといって、弱いとは限りません。上の等級で試していないだけ、ということもあります。保証されている最低ラインは、AAAのほうが高い。ただ、実際にどちらが強いかは、ラベルだけでは決められません。

ラベルが変わることもあります。英国のオックスフォードは2021年、「AAA」として売っていたジーンズが、摩耗ではAAにしか適合していなかったと発表しました。認証機関の誤りだったとしています。在庫は「AA」に貼り替えられ、製品名も変わりました。同じジーンズに、時期によって違うラベルが付いていたことになります。

私自身にも、ラベルが合わなかった経験があります。2024年に買って、2回の夏に着たアイコンのメッシュジャケット「Mesh AF」があります。そのタグには、AAと書かれていました(写真は残っていません)。ところが、アイコンの公式サイトも、主な販売店のページも、このジャケットをEN 17092-4のクラスAとしています。古い個体のタグはAだったと私は理解していますが、なぜ違うのかを示すメーカーの資料は、見つけられませんでした。

ラベルも、間違うことがあります。手元の1着のラベルと、メーカーのサイトの表記が違うときは、低いほうを前提にするか、メーカーに確かめてください。

8MotoCAP——CE認証品でも、実測の星はばらつく

等級を並べて順位をつけられないなら、何で比べればいいのか。手がかりのひとつが、オーストラリアとニュージーランドのMotoCAPです。グローブの記事の§11でも使った、ディーキン大学が試験を担う評価制度です。

MotoCAPは、店やオンラインショップで、匿名で製品を買ってきて試験します。ジャケットとパンツは、1モデルにつき2着ずつ。保護性能は、摩耗・衝撃・縫い目の破裂強さの3つから計算し、0.5〜5つ星で出します。重みは、摩耗が5割、衝撃が3割、縫い目が2割です。摩耗の試験方法はEN 17092とは別(ケンブリッジ式)なので、点数をそのまま等級に置き換えることはできません。

2026年10月19日の時点で、MotoCAPのサイトには540件のジャケットが載っています。保護性能の星の内訳は、次のとおりです。

星全体(540件)レザー(202件)テキスタイル(332件)
5つ星23203
4つ星69617
3つ星765323
2つ星19856139
1つ星15811145
0.5つ星16115

サイトの絞り込みの件数から数えたもので、古い評価も含みます。全体には、デニムなどその他の素材の6件を含みます。

テキスタイルのジャケットは、332件のうち160件が1つ星以下でした。4つ星以上は10件です。レザーは、202件のうち81件が4つ星以上でした。パンツは、289件のうち181件が1つ星以下です。

MotoCAP自身は、EN 17092の認証品でも、保護性能が0.5つ星か1つ星だったものが45件あったと書いています。理由は、摩耗試験の違いだといいます。EN 17092の試験で擦るコンクリートの面は、オーストラリアやニュージーランドの多くの道路より擦れにくい、という説明です。EN 17092の認証品でも、MotoCAPで3つ星以上を取るものはある、とも書いています。

MotoCAPはまた、EN 17092の試験に出される製品はメーカーが用意したものだと書いています。認証が示すのは、最低ラインを越えたかどうかだけだ、とも。

逆の例もあります。アルパインスターズのレザージャケット「Faster V3 Airflow」は、メーカーのサイトではクラスA(EN 17092-4)です。MotoCAPでは5つ星でした(摩耗9点、衝撃8点、破裂10点)。一方、レブイットのレザージャケット「Ignition 4 H2O」は、メーカーのサイトでクラスAAです。MotoCAPでは4つ星で、摩耗は5点でした。

この比較には、限りがあります。MotoCAPは製品の等級を記録していないので、等級はメーカーのサイトの表記です。MotoCAPが買った個体のラベルと同じかどうかは、分かりません。2着は、スポーツ向けとツーリング向けで、種類も違います。

それでも、ひとつは言えます。クラスAのラベルの製品が、クラスAAのラベルの製品より、摩耗で高い点を取ることがあります。等級は最低ラインであって、天井ではない。§7で書いたのは、こういうことです。

9「レザーはサーキット用」は逆です

「レザーはサーキットで着るもの。公道では大げさ」という声を、よく聞きます。私は、その理屈は逆だと思っています。

サーキットでレザーを着るのは、見た目のためではありません。限界まで攻めれば転ぶかもしれないと分かっていて、転んでもその日のうちに家に帰り、次の日にまた走るためです。レースを主催する側も、装備を定めています。日本のMFJは、公認のロードレースで、2021年からCE規格のプロテクターの装備を義務にしています。肩・肘・膝はEN 1621-1、背中はEN 1621-2、胸はEN 1621-3です。国際的なFIMの2025年の規則は、背中のプロテクター(EN 1621-2)を必須にしています。スーツについては、EN 17092-3(AA)の試験に適合することを推奨しています。

公道で変わるのは、自分で転ぶ確率かもしれません。限界まで攻めないなら、自分のミスで転ぶことは、サーキットより少ないでしょう。

でも、転んだあとのことは、公道のほうが厳しいのです。サーキットには、コースの外にランオフエリアがあり、全員が同じ向きに走っています。公道には、ランオフエリアがありません。あるのは、対向車、電柱、ガードレール、縁石、標識の柱、そして同じ速さで走っている車です。警察庁の集計では、2021年から2025年に二輪車に乗っていて亡くなった人は2,369人です。事故の形でいちばん多かったのは、工作物への衝突の532人(22.5%)でした。次が右折時の事故の497人(21.0%)、出会い頭の440人(18.6%)。車両どうしの事故は、全体では65.4%を占めます。

転ぶ原因も、自分だけでは決まりません。砂利、落ち葉、濡れたマンホール。そして、こちらを見ていない車。転ぶきっかけは公道のほうが多く、転んだ先でぶつかるものも、公道のほうが多い。サーキットで最上の装備が役に立つなら、公道では、それ以上に役に立つはずだと、私は考えています。

10CEラベルの読み方——「CE規格プロテクター付き」は服の認証ではない

ジャケットやパンツには、2種類のラベルが付いていることがあります。服のラベルと、プロテクターのラベルです。この2つは、別のものを保証しています。

服のラベルプロテクターのラベル
規格EN 17092EN 1621-1(背中はEN 1621-2、胸はEN 1621-3)
保証していること生地・縫い目の摩耗と強さ、プロテクターの有無と位置プロテクターが伝える力の上限
等級の書き方AAA・AA・A・B・Cレベル1・2
ほかの記号—タイプA/B、T+/T-、部位の記号

服のラベルには、EN 17092のパート番号と等級が書かれています。EN 17092-2ならAAA、-3ならAA、-4ならA、-5ならB、-6ならCです。

プロテクターのラベルには、EN 1621-1(背中ならEN 1621-2、胸ならEN 1621-3)と、レベル(1か2)が書かれています。そのほかに、こんな記号が並びます。

  • タイプA/B:プロテクターの大きさ。Aは小さめ、Bは大きめ。
  • T+/T-:高温(+40℃)、低温(-10℃)での衝撃試験にも通ったという印。空欄なら、その試験は受けていません。
  • 部位の記号:S(肩)、E(肘)、H(腰)、K(膝)など。

ここで気をつけたいのが、「CE規格プロテクター付き」という売り文句です。これは、中に入っているプロテクターのラベルの話で、服のラベルの話ではありません。プロテクターがCEレベル2でも、それを包んでいる生地と縫い目が、時速何kmの擦れに耐えるのかは、何も分かりません。生地が先に破れれば、プロテクターも、その場所に留まっていられません。服にEN 17092のラベルがなければ、そこは試験されていないのです。

11私の場合——季節で着るものを変え、走り方も変えている

ここからは、私自身の話です。私は通勤で毎日バイクに乗っていて、季節と天気で着るものを変えています。

上半身下半身
通年・毎回コミネのメッシュのプロテクターベスト SK-694(胸・背中・脇腹のプロテクターを、すべてCEレベル2のENIGMAに入れ替え)—
7月・8月GMSのメッシュジャケット(EN 17092-4、クラスA)+肩・肘にCEレベル2を後付けプロテクター付きのメッシュのレギンス+普通のズボンかジーンズ
雨の日の通勤ダイネーゼのD-Dryテキスタイルジャケット(AA)+肩・肘にCEレベル2を後付けダイネーゼのD-Dryテキスタイルパンツ(A)+プロテクター付きレギンス
それ以外の時期ダイネーゼのレザージャケット(パンチングあり/なし、どちらもAA)+肩・肘にCEレベル2を後付けHYODのメッシュとレザーのパンツ(CE認証なし)、またはデグナーのジーンズ(CE認証なし)。下にプロテクター付きレギンス(デグナー以外)

季節に関係なく、毎回着ているのが、コミネのメッシュのプロテクターベスト「SK-694 CEボディプロテクションライナーベスト」です。標準で、胸と背中にハードタイプのプロテクター、脇の下のすぐ下、肋骨の横にソフトタイプのプロテクターが入っています。コミネは、背中と脇のプロテクターをCE規格の製品と説明しています。体の横まで守るウェアを、私はほかに見たことがありません。

私は、このベストのプロテクターを、すべて同じコミネの「ENIGMA」シリーズに入れ替えました。薄くて体に沿って曲がり、通気の穴があるCEレベル2のソフトプロテクターです。脇のポケットには、ENIGMAの腰用プロテクターを入れています。

ENIGMAには、最初の世代、G2、G3があります。世代が進むごとに着け心地は少しずつ良くなっていますが、どれもCEレベル2で、値段もほぼ同じです。古い世代もまだ売られていて、世代ごとに形と大きさが少しずつ違います。肩や肘だけでなく、膝や腰のプロテクターもあるので、コミネ以外のジャケットやパンツでも、ポケットの形と大きさに合うものを選びやすいのです。

ひとつ注意があります。名前に「ライト」が付くENIGMAは、CEレベル1です。レベルは商品名に書かれているので、買う前に確かめてください。

D3OのDiabloも使ったことがあります。肘・肩・膝用のCEレベル2を、ENIGMAのG2と同じ服に入れて比べました。形と大きさは近く、厚さの違いは、触っても見ても分からない程度です。それでも、Diabloのほうが柔らかく、よく曲がり、通気はENIGMAと変わらないので、着け心地はDiabloのほうが上でした。D3Oは、ふだんは柔らかく、強く打たれた瞬間に硬くなる素材です。ただ、日本では値段の差が大きく、手に入れるのも大変です。店頭で見かけることは少なく、通販でも扱う店と在庫が少ないので、届くまでに時間がかかります。コミネなら、通販で頼んで翌日に届くことも珍しくありません。私がDiabloを買ったのは一度だけで、そのあと同じ大きさのものを買い足すときは、ずっと安いENIGMAのG2にしています。

その上に、ジャケットを4着から選びます。ダイネーゼのレザーが2着(パンチングありと、なし)で、どちらもAAです。雨の日の通勤には、ダイネーゼの防水テキスタイル(D-Dry)のジャケットとパンツ。ジャケットはAA、パンツはAです。そして7月と8月だけは、GMSのメッシュジャケットです。このメッシュは、EN 17092-4(クラスA)の認証品です。どのジャケットにも、コミネのCEレベル2の肩と肘のプロテクターを、自分で付けています。

ダイネーゼのレザーの肩には、最初の世代のENIGMA(CEレベル2)を使っています。G2より少し大きく、覆う範囲が広いからです。このジャケットの肩のプロテクターは、ポケットに入れる作りではありません。硬いシェルをフォームのパッドに縫い付けたもので、パッドを面ファスナー2本でジャケットの内側に留めています。私は縫い目を切ってシェルを外し、その位置にENIGMAを、布用の両面テープで貼り付けました。

これは、メーカーが認めた方法ではありません。§3で書いたとおり、プロテクターは決まった位置に留まってこそ働きます。テープで貼ったENIGMAが、転んだときにずれないかは、誰も試験していません。ただ、いまの貼り付き方を見るかぎり、これがはがれるほどの転び方をしたなら、ほかにもっと大きな問題が起きているだろう、というのが私の判断です。

真夏のパンツは、プロテクター付きのメッシュのレギンスの上に、普通のズボンかジーンズです。レギンスの腰と膝はCEレベル2で、尾てい骨のプロテクターはCE認証品ではありません。これが、私の装備の中で、いちばん危ない組み合わせだと思っています。滑走を受け持つのが、普通のズボンだからです。

それ以外の季節は、HYODのメッシュとレザーのパンツか、デグナーのライディングジーンズです。どちらも、CE認証品ではありません。デグナーのジーンズは、厚くて丈夫で、そのぶん暖かい、というのが私の実感です。

デグナー以外は、パンツのプロテクターを外して、プロテクター付きのレギンスを下にはいています。プロテクターを、自分が守りたい位置に留めておけるからです。

いまは、一部にパンチングの入ったものか、パンチングのないレザーパンツを探していますが、まだ決めていません。

ひとつ、はっきり書いておきます。後からプロテクターを入れても、ジャケットの認証や等級が変わるわけではありません。私のGMSは、Aの速さで試されたジャケットに、レベル2のプロテクターを入れたもの、というだけです。レザーのジャケットに入れたプロテクターも、ジャケットと一緒に試験を受けたわけではありません。

そして、私はいつもフルレザーを着ているわけではありません。動きやすさも、涼しさも、バイクを降りたときの格好も、大事だと思っています。いつも最大限に慎重に走るのが理想なのは分かっています。でも、自分はいつもそう走っている、と書けば嘘になります。

ただ、自分で気づいていることがあります。夏の装備のとき、私はフルレザーのときより、明らかに慎重に走っています。自分がどれだけ守られていないかを知っているからです。裏を返せば、フルレザーのときの私は、スピードも、バイクを寝かせる深さも、そのぶん攻めています。装備を知ることも、走り方を変えるのだと思います。

広告私が自分で使っているものだけを並べています。並び順は、順位ではありません。ポケットに合うかどうかは、あなたのジャケットやパンツで決まります。

コミネ SK-694 CEボディプロテクションライナーベスト

確かめられていること
胸・背中・脇(肋骨の横)にプロテクターが入る、ナイロンのインナーベスト。コミネは、背中と脇のプロテクターをCE規格品と説明しています。サイズはS〜5XLBと、レディース。
引き換えに
ベストなので、肩・肘・腰・膝は守りません。滑走を受け持つのも、上に着るジャケットです。私は、標準のプロテクターを、すべて別売りのENIGMAに入れ替えています。

コミネ SK-869 エニグマG2 チェストプロテクター

確かめられていること
コミネの公式ショップの説明は「欧州CE規格レベル2認証を取得した胸部用ソフトインナープロテクター」。私の手元のもののラベルは、胸部用の規格EN 1621-3のレベル2です。フリーサイズ。
引き換えに
プロテクター単体なので、胸にポケットのある服かベストが要ります。

コミネ SK-867 エニグマG2 バックプロテクター

確かめられていること
コミネの公式ショップの説明は「欧州CE規格レベル2認証を取得した脊椎用ソフトインナープロテクター」。背中用の規格EN 1621-2のレベル2です。フリーサイズ。
引き換えに
背中にポケットのある服かベストが要ります。フリーサイズなので、体格によっては覆う範囲が合わないことがあります。

コミネ SK-866 エニグマG2 ショルダープロテクター

確かめられていること
コミネの公式ショップの説明は「欧州CE規格レベル2認証を取得した肩用ソフトインナープロテクター」。規格はEN 1621-1のレベル2です。フリーサイズ。
引き換えに
形と大きさの近いD3OのDiabloと比べると、硬く、曲がりにくい。そのかわり、日本では値段がずっと安く、手に入りやすい。ポケットの大きさに合うか、確かめてから選んでください。

コミネ SK-865 エニグマG2 EKプロテクター

確かめられていること
コミネの公式ショップの説明は「欧州CE規格レベル2認証を取得した肘・膝用ソフトインナープロテクター」。規格はEN 1621-1のレベル2です。フリーサイズ。
引き換えに
形と大きさの近いD3OのDiabloと比べると、硬く、曲がりにくい。肘と膝で同じものを使うので、ポケットの大きさに合うか、確かめてから選んでください。

コミネ SK-864 エニグマG2 ウエストプロテクター

確かめられていること
コミネの公式ショップの説明は「欧州CE規格レベル2認証を取得した腰横用ソフトインナープロテクター」。規格はEN 1621-1のレベル2です。フリーサイズ。
引き換えに
プロテクター単体なので、大きさの合うポケットのある服が要ります。

コミネ SK-842 エニグマCE2 サイドウエストプロテクター

確かめられていること
最初の世代のENIGMA。コミネの公式ショップでは「欧州CE規格レベル2認証を取得」と説明。規格はEN 1621-1です。腰の横用の左右セット、TPE製、幅130×高さ230mm、厚さ8mm。
引き換えに
G2・G3とは形と大きさが違います。ポケットの寸法と比べてから選んでください。

コミネ SK-853 エニグマCE2 E/S/Kガード

確かめられていること
最初の世代のENIGMA。EN 1621-1のレベル2。肩・肘・膝用の左右セット、TPE製、幅130×高さ185mm、厚さ8mm。
引き換えに
G2より少し大きい。私がダイネーゼの肩に使っているのは、これです。ただし、私のようにテープで貼るのは、メーカーが認めた使い方ではありません。

G3と、名前に「ライト」が付くCEレベル1のENIGMAは、私が使っていないので載せていません。劣っているという意味ではありません。

12まとめ——店で見るのは3つ、決めるのはあなたです

この記事で並べたことを、店で使える形にまとめます。見るのは、3つです。

  1. 服の内側に、EN 17092と等級(AAA・AA・A・B)のラベルがあるか。「CE規格プロテクター付き」は、服の認証ではありません。
  2. プロテクターに、EN 1621-1とレベル(1か2)のラベルがあるか。背中はEN 1621-2、胸はEN 1621-3です。
  3. 背中や胸のポケットに、プロテクターが実際に入っているか。ポケットだけで、中身は別売りという服もあります。

何を着るかに、正解はありません。年に数回、近所を流す人と、毎週峠に行く人と、毎日、渋滞の中を通勤する人が、同じ結論になる必要はありません。

薄いジャケットを選んでもいい。私はそれを咎めません。ただ、そのとき自分がどれだけ守られていて、何を手放しているのかを知ったうえで選ぶのと、知らずに選ぶのとでは、まったく違います。私は、知ってから走り方が変わりました。

選ぶのは、あなたです。

装備が決まったら、次は行き先です。Japan Bike Cafeは、駐車場とアクセス路の路面がわかるツーリング先を、現在地や都道府県から検索できるディレクトリです。

よくある質問

CEレベル1とレベル2の違いは何ですか。

プロテクターの規格EN 1621-1では、5kgの重りを約1mから落としたとき、下に伝わる力の平均がレベル1は35kN以下、レベル2は20kN以下で合格です。レベル2のほうが、体に届く力の上限が約4割低くなっています。どちらも、衝撃を消すのではなく減らすための基準です。

AAA・AA・Aの違いは何ですか。

ジャケットやパンツの規格EN 17092の等級で、主な違いは摩耗試験の速さです。肩や肘などの最も擦れやすい場所で、AAAは時速約120km、AAは約70km、Aは約45kmの速さから止まるまで擦り、穴があかなければ合格です。AAAとAAは肩・肘・腰・膝の、Aは肩・肘・膝のプロテクターが必須です(Aの腰は任意)。

CE規格のないバイクジャケットは危険ですか。

危険とは限りません。日本ではバイクウェアに安全基準がなく、試験を受けずに売られている製品が多くあります。しっかり作られたものもあるはずです。ただ、試験の記録がなければ、転んだときにどこまで耐えるのかは、買う側には分かりません。

「CE規格プロテクター付き」のジャケットは、CE認証品ですか。

そうとは限りません。それは中のプロテクターがEN 1621の認証品だという意味で、ジャケット自体の摩耗や縫い目の強さを保証するものではありません。服にEN 17092の等級が書かれたラベルがあるかを確かめてください。

夏用のメッシュジャケットにも、CE規格はありますか。

あります。メッシュ主体のジャケットでも、EN 17092のAやAAの認証を取った製品が売られています。ただし、等級は申請した試験の結果で、メッシュかどうかでは決まりません。手元の製品のラベルで等級を確かめてください。

胸部プロテクターは必要ですか。

警察庁の集計では、2021年から2025年に二輪車に乗っていて亡くなった人の30.2%が、胸部の損傷が致命傷でした。頭部の37.9%に次ぐ割合です。一方で、警視庁が2026年に都内で調べた胸部プロテクターの着用率は10.8%でした。胸部プロテクターの規格はEN 1621-3です。着けるかどうかは、この数字を見て決めてください。